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~産業・観光 発信力磨く~
愛媛県東部にある西条市のまちづくりに活気が出てきた。陣頭指揮をとるのは約9年半務めた県議を辞職して昨年11月の選挙で初当選した玉井敏久市長だ。市内に大手企業の工場が多数立地し、四国屈指の工業都市でもある同市の産業・観光振興のあり方について玉井市長に聞いた。
――4月1日、西条市は大阪事務所を4年ぶりに復活しました。
「大阪事務所は前市長の時代に県の大阪事務所へ市職員を派遣する形に移行したが、市独自の活動に制限があった。このため県事務所への職員派遣は維持しながら再び独自の事務所を大阪市内に開設し、西条のものづくり企業の技術PRや地元農産品の販促支援などを強化することにした」
――産品の売り込みは、市場規模が大きい東京が重要ではないですか。
「もちろんだ。東京の県事務所にも市職員を派遣しており、こちらは円滑な活動が可能になっている。一方で大阪が大切なのは、以前、培われた地盤、人脈があるからだ。例えば以前は関西からシェフが西条まで食材を見に来たり、また西条の農家がシェフを訪ねたりというようなことがあった。このような関係が復活できれば、その効果は大きいはずだ」
――西条市は製造品出荷額等(2014年)が四国の市町村で愛媛県今治市に次いで第2位なのに、工業都市のイメージが弱いと言われます。
「情報発信が不足していたのだと思う。立地企業の情報だけでなく、観光資源についても同じことが言える。これまで西日本最高峰の石鎚山や四国鉄道文化館などのPRは十分だったか。産業、観光の様々な情報を整理して積極的に発信していこうと、4月には庁内にシティプロモーション推進課を新設した」
――市内に工場がある大手企業とはどう付き合っていきますか。
「年2回ほどの頻度で必ず、県外にある本社を訪問したい。私どもが西条で収集した情報を伝えたり、先方の要望を聞いたりしながら関係を構築していく」
――企業誘致の面で現状の課題は何ですか。
「工場用地が不足してきたことだ。既存の事業所の生産状況などを注意深く見ながらだが、用地確保を後押しする施策が必要になる可能性もあると考えている」
――中小企業や地場産業の振興は。
「高い技術を有する中小企業は多く、その動向を把握し、情報発信力を強化する。地域おこし協力隊として入ってきていただいた都市部の人材による市内での起業を後押しする取り組みも進める。林業分野では、新建材として注目される直交集成板(CLT)を原木から一貫して製造する全国初の工場が市内に誕生するのを受け、ぜひ地元で設計者を育成したい」
【西条市の概要】
人口/11万1147人(4月末時点)
主要産業/飲料、日用品、重機など工場が多数あり、農業も盛ん
特徴/国の名水百選にも選ばれている自噴水「うちぬき」が多い