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iJAMP記事(令和3年9月6日)

ページID:0081064 更新日:2021年9月27日更新 印刷ページ表示

トップインタビュー

 ~移住者を巻き込み共創のまちづくり~

 出版社が主催する今年の「住みたい田舎ベストランキング」の若者、子育て、シニア、総合の全4部門で全国1位に輝いた愛媛県西条市。石鎚山と瀬戸内海の豊かな自然、四国屈指の農業産出額と製造品出荷額を誇るバランスの取れた産業集積が全国から移住者を引き寄せる。2期目に臨む玉井敏久市長(たまい・としひさ=58)は、新型コロナウイルス対策に追われながらも、コロナ後を見据えて描いた青写真に自信を深める。めざすのは、移住者も巻き込んだ「共創のまちづくり」「持続可能な勝ち残るまち」だ。


 市長が各課に掲示を命じた今年のキャッチフレーズ「共創」。その意味を「他者を思いやり、尊重する『利他の心』をもって、社会の『全体最適』を実現すること」と説明する。都市間競争を勝ち抜くためにも地域全体のことを考え、隣町とも連携しながら全体のレベルを上げていく、そんな思いからだ。


 それが結実したのが1期目から取り組む移住定住の推進。「人が人を呼んでくれる」好循環を生み出した背景には徹底したプロモーション戦略があった。メディアや広告会社を使い、ターゲットを絞って市の魅力を発信する。移住希望者の個々の事情に合わせた無料体験ツアーを企画しアテンド。先輩移住者から苦労話も含めて生の声を聞き、お試し住宅に住んでもらう。こうした努力が「(移住希望者に)すごく響き、ささった」という。


 移住者のなりわいづくりにも力をそそぐ。補助金で古民家をリフォームし、JAの研修を受けて就農した若者も多い。来年完成する拠点施設では、移住者希望者らを一元的に支援する「移住フルサポートサービス」も始まる。2拠点居住やテレワークなど、働き方に合わせて人を呼び込む施策も検討中。祖父母が暮らす古里に孫世代を移住させる「孫ターン」や、後継者不足に悩む伝統産業などを念頭に「事業継承」でも人を呼びたいと構想を練る。


 住みたい田舎全国一の先にある目標が、在住者と移住者、関係人口を合わせた「活動人口」の増加だ。人口減少を移住定住で鈍化させ、活動人口を増やして「持続可能な勝ち残るまち」をつくる。今年5月に内閣府から選定を受けた「SDGs未来都市」がその原動力となる。既に経済、環境、社会の3分野で市独自のポイント制度を活用したモデル事業が立ち上がりつつある。


 もう一つのカギは、石鎚山系などから流れ出し、涵養(かんよう)された豊富な地下水の保全。消毒なしで飲料可能な自噴水「うちぬき」が至る所に存在し、水量が豊かなため、保全に対する市民の意識は低い。市は現行の保全条例を廃止し、新たに「地域公水」という理念を盛り込み地下水を市民の共有財産とする条例の制定をめざす。格安の水道料金や下水道料金の適正化も進めている。市民の意識改革には森林環境税の導入も追い風だ。森、川、海の「水の循環をしっかり守っていく。次の世代につないでいく」と意気込む。市役所と市民の「共創」が続いている。

 

〔横顔〕 企業の労組役員から県議を経て2016年初当選。好きな言葉は孔子の「事を敬して信あり」。趣味はスポーツ観戦。80回におよぶ献血は「自分でできる小さな積み上げ」。

〔市の自慢〕 「水と祭りと石鎚山」。江戸時代から続く西条祭りは150台の屋台が列をなす絢爛(けんらん)豪華な時代絵巻。豊かな水の恵みを利用した酒造りも盛んで、東京農業大出身の若い杜氏(とうじ)たちが腕を競う。

インタビューの様子