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民話 喜左衛門狸

ページID:0001580 更新日:2015年1月15日更新 印刷ページ表示

民話

喜左衛門狸

 大喜味神社の喜左衛門狸は、神通力のある大狸で、新居浜の小女郎狸、屋島の禿狸とともに四国の大狸として京都・大阪まで名を知られておりました。
 喜左衛門は、長福寺の南明(なんめい)和尚のお供をして、よく法事に出かけました。小僧に化けて後ろから和尚に続く喜左衛門、ついうっかりしっ尾を出していると、
「喜左、しっ尾を忘れちゃ、いくまいが」と、注意されたということです。
 ある時、喜左衛門は南明和尚に、
「今から讃岐の金毘羅様へ行って参ります」と言って寺を飛び出し、神通力にものをいわせて狸道をすっ飛んで行きました。その速いこと、速いこと、またたく間に金毘羅様にやってきました。
 そこには屋島の禿狸が待っていて、早速、腕競べをやろうということになりました。
 そこで、屋島の禿狸は、自分の体の毛を抜いて、ふっと一吹きすると、これは見事、源平数千の軍兵が敵味方に分かれて、ときの声を挙げながら大合戦が始まりました。
 喜左衛門は驚いて「さすがは禿狸、なかなかやるわい」と、そのすごい腕前に舌を巻きました。禿狸は自慢そうな顔で「おい喜左、次はお前の番だ」と迫りました。ちょっと困った喜左衛門でしたが、そこは神通力の持ち主、三月程あとに、お国入りする紀州の殿様の行列のあることを思い出したので、三月たったら大名行列を見せてやろうと約束しました。
 約束の日禿狸は、(喜左衛門の奴、どんな化け方をして俺を驚かすつもりかな)と待っておりますと、なるほど向こうから紀州の殿様の行列が大勢の家来を従えて、下に下にと触れながら物々しく進んできました。
 禿狸は、あまりにも見事な本物そっくりの大名行列に驚きましたが、気を取り直して、行列が目の前にきた時、殿様の籠に近寄り、「おい、喜左、うまいぞ、上出来だ。それにしてもよく化けたな」と声を掛けました。ところが、これは本物の紀州様の行列ですから、警護の侍たちは大変驚いて、無礼者と刀を抜いて斬り掛かってきました。
 「こりゃ本物だ。喜左の奴めに一杯食わされた」禿狸は、逃げるが勝ちと、しっ尾を巻いて屋島へ逃げ帰りました。
 さすがの禿狸も、喜左衛門の知恵には、かなわなかったということです。

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