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民話 力持ち、赤ひげ吉左エ門
民話
力持ち、赤ひげ吉左エ門
昔のこと。大保木の横吹というところに、赤ひげ吉左エ門という、大した力持ちがいた。100貫匁(400キログラム弱)の石を、二つも天秤でかついで、それでも平気な顔をして歩いていたという。ある日のこと、殿さんから「石普請(石で工事)をするときに、大保木からも誰かをよこせ」と言ってきた。そこで、赤ひげ吉左エ門に行ってもらうことになった。
吉左エ門は、西条のご城下まではるばると出かけて行った。
吉左エ門は正直な人であったので、一生懸命に働いて、石の200貫をかついで、どんどん運んだ。
そうしたら、石工さんの石を積むのが間に合わなくなってしまい、その上、石工さんの積んでいる石の上をどんどん歩くので、石工さんは困って「仕事にならんわい」と、殿さんにもうし上げた。
そうしたら、赤ひげ吉左エ門は殿さんに呼び出されて、
「赤ひげ吉左エ門、お前はよう働いてくれるそうじゃが石工の仕事の害になるようなやり方をしてもろては困る。お前の村には、もっと力のない者はおらんのか」と、聞かれた。
赤ひげ吉左エ門は、「へえ、大保木じゃあ、わしが一番の力なしの、なまけ者の、馬鹿者でございます。他の者は、みいな300貫はかるうにかつぎますけん」と、言った。そしたら殿さんはびっくりして、「ほおう、そんじゃもう、大保木はだあれも手伝いに来んでもええ」と、言ってくれた。
赤ひげ吉左エ門は、大喜びで村へ帰って、皆の衆にこのことを伝えたら、村の衆は大変喜んだという。
「それはよかったのう、毎日手伝いばっかりさせられとったらうちのことはなあんも出来ん。あごが干上がってしもうぞいのう。ほんまによかったのう」
と言って、赤ひげ左エ門に頭を下げて拝んだという。
力と、とんちで大保木村を救ったので、暮らしも少しずつ良くなったということです。