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民話 石鎚の投げ石
民話
石鎚の投げ石
石鎚の神と伊曽乃の神はもともと夫婦神である。夫の神である石鎚の神が山上に行かれる時、「今、我の行かんとするところは、女神などの行くべきところではない。だから、しばらくここにとどまっておれ。やがて山上に着けば、三つの石を投げるであろう。その落ちた真ん中を汝のすみかと定めよ。しからば我は常に汝のところに行きかうようであろう」と約束した。その後山頂に至り、三つの巨石を投げた。
今、伊曽乃神社の鳥居元にある巨石がその一つであるという。他の二つは、伊曽乃神社の社寺に近い境内であったろうと思われるところにある。土地の人々は、これを神聖視して決して手に触れないという。
この石を、また役(えん)の行者の片手石ともいう。この話は、まさしく神と神との結婚を意味するもので、仏教のにおいのない神話である。
この投げ石のあるところから、石鎚山の頂上が見える。ここは石鎚の遥拝所の一つである。小松の法安寺からも、横峰寺の上、星の森峠からも見える。