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加茂川河口 干潟生物調査 結果報告(令和6年9月14日実施)
開催報告
令和6年9月14日に加茂川河口の干潟生物調査を行いました。
調査は総勢27名(講師等含む)で行いました。
↓調査報告書↓
開催の様子
調査結果
絶滅危惧種
例年、レッドデータブックに掲載されている種についてコメントしていますが、これまでは、日本ベントス学会が作成した東海大学出版会のレッドデータブック「干潟の絶滅危惧動物図鑑」(日本ベントス学会編、2012)のランクを紹介していました。本をお持ちでなくても、レッドリストについては、日本ベントス学会のホームページからダウンロードすることができます(日本ベントス学会編(2012 )干潟ベントス分類群別のレッドデータカテゴリー)。今回の調査では「準絶滅危惧」に指定された種が9種採集され、「絶滅危惧II 類」に指定された種が1種採集されました。「絶滅危惧II 類」の種とは、カクレガニ科のフタハピンノです。西条自然学校の調査(光澤ほか、2016、「愛媛県西条市加茂川河口干潟における底生生物相」愛媛県総合科学博物館研究報告、20:1−15)でも加茂川で確認されていますが、今回、新たに本種の標本を得ることができました。これまでは、紀伊水道と九州沿岸でしか確認されていない希少なカニ類で、イソシジミやクチバガイ、ソトオリガイなどの二枚貝に寄生することが知られています。今回の調査では、出歩いていたオスを採集したようですので、二枚貝のなかを調査すればより多くの個体を採集することができるかもしれません。
環境省版海洋生物レッドリスト
ところで、平成29年3月に、環境省版海洋生物レッドリストが公表されました。「海のレッドリスト公表」、「56種が絶滅危惧種」などと新聞に載っていましたので、ご存知の方も多いと思います。環境省のこれまでのレッドリスト・レッドデータブックでは、主に陸域の生物、陸水域の生物が対象となっていて、干潟に住む生物では、魚類と軟体動物のみが評価されていました(環境省第4次レッドリスト)。それが、とうとう、甲殻類やゴカイ類などについても評価され、レッドリストとして公表されたわけです。日本ベントス学会編(2012)の干潟のレッドデータブックとの違いは、対象とする生息域と評価方法です。日本ベントス学会が干潟域のみを対象としているのに対して、環境省は全環境を対象としていますので、干潟では減少しているけど、潮下帯には健全な個体群があるような種では、両者のリストの評価結果が異なります。また、日本ベントス学会は定性評価、環境省では定量評価によりランクをつけましたので、やはり評価結果が異なる場合があります。最後に、日本ベントス学会編(2012)の出版後に新たな情報が集まった場合にも、評価結果が異なることになるでしょう。興味をお持ちの方は、両者のリストを見比べてみてください。ちなみに、フタハピンノは環境省のレッドリストでも「絶滅危惧II 類」として評価されています。