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西条市および「千の風」手紙プロジェクトでは、「千の風になったあなたへ贈る手紙」の全国募集を記念し、新井満さん他素敵なゲストをお迎えし、「千の風物語(第2章)」と題し、講演・シンポジウムイベントを開催いたしました。
開催日時 | 平成25年5月11日(土曜日)16時00分~19時45分 |
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開催場所 | 西条市総合文化会館 小ホール、展示室 |
プログラム (出演者) |
総合司会:真鍋明紀子 |
当日は、手紙の募集が話題を呼ぶ中、満員の来場者の下、盛大に開催されました。
開演にあたり、主催者の市民団体「千の風」手紙プロジェクトの代表である越智委員長と、共催者を代表して西条市長の青野勝により、挨拶が行われました。
主催者挨拶(「千の風」手紙プロジェクト委員長 越智 將文)
共催者挨拶(西条市長 青野 勝)
また、ステージ上には、手紙募集のシンボル兼投函用ポスト「白い羽のポスト」と、「千の風になったあなたへ贈る手紙」の数々が飾られ、一際注目を集めていました。
プログラムは、「千の風になって」の生みの親である新井満さんによる講演でスタートしました。「千の風になって」名曲誕生のエピソードや、その素晴らしい詩の世界を解説、紹介していただき、来場者の方々は一心に耳を傾けていました。
東日本大震災の津波による壊滅的な被害の中、岩手県陸前高田市の高田松原において唯一生き残った奇跡の一本松については、大きな話題を呼びましたが、昨年、新井満さんはその木を主人公とした、「希望の木」と題する一つの物語を完成させました。
このイベントにおいては、命をテーマとしたその感動的な物語を新井満さん自らの朗読で紹介していただきました。
「希望の木」は、その優れた視覚的描写と感動的な内容から、アニメーション化の計画が進んでいます。本イベントでは、そのアニメーションの主題歌として作られた「いのちのバトン」が新井満さんにより披露されました。
初披露ということで、非常に大きな話題を呼んだとともに、その素敵な歌とやさしいメロディーに、満場の来場者から喝采の拍手が贈られていました。
<関連リンク>(外部リンク)
第2部は、「千の風になったあなたへ贈る手紙」の作品紹介からスタートしました。4名の皆さんにより、素敵な手紙が朗読、紹介されました。
「千の風」手紙プロジェクト委員長 朗読
平成21年度(株)朝日新聞社「千の風になったあなたへ贈る手紙」募集
さだまさし賞 受賞作品
「生きているだけで百点満点」
乳がんでお前が亡くなってから、四度目の冬が近づいている。
独りで観る四季折々の風景は、いつも見たことがない気がする。そして目に滲みる。
とりわけ今年の秋の、松雲山荘の鮮やかな紅葉は見事で、その彩りはなぜかとても、堪えた。時がたてば忘れていくことと、想いが増していくことがある。
男は生きるのが不器用だから、やっぱり女房よりも先に逝くべきだと思うよ。
よく喧嘩をしたな。そして何故、お前のような女と一緒になったのかと思ったものだった。神は非情だ。お前が生きている時は、どんなに俺にとってお前が、必要であるかを気づかせてはくれなかった。
不意に、お前の友人たちと顔を逢わせることがある。彼女たちは頼みもしないのに、お前との思い出話を始め、そして去って行く。
望まないのに、寂しさを詰めていた箱が開いてしまい、それを閉じるには、しばらく時間がかかる。
助産師であったお前は、多くの新生児を取り上げた体験をもとに、小、中学校の生徒達に、命の誕生までの道のりと、その大切さについて講演をしていたが、講演を聴いた生徒達の感想文集を見つけた。そしてお前が生徒たちに残したという言葉を知ったよ。
「生きているだけで百点満点」
その言葉に勇気を持った生徒が多くいた。
お前に頼みたい。どうか千の風になって、残された俺や、まだ独り立ちしたとは言えない我が家の、三人の子供たちの耳元に立ち寄り、励まして欲しい。そして言って欲しい。
「生きているだけで百点満点」と。
(朗読者 越智委員長のコメント)
「生きているだけで百点満点。」
とても素敵な言葉で、私が「千の風になったあなたへ贈る手紙」の作品の中で最も強く印象に残った言葉です。
この作品を選考したさだまさしさんは、「たった一つの言葉が、人に勇気や元気を与えてくれることがある。」と語っておられますが、本当にこの言葉は多くの人々を励まし、生きる力を与えてくれる言葉だと思います。私自身にも大きな力をくれました。
私は、「千の風になったあなたへ贈る手紙」を通し、こうした言葉に出会えたことをとても感謝しています。ぜひこうした素敵な言葉を全国の多くの人々に紹介し、この「手紙のふるさと西条」を全国に発信していけたらと思っています。
西条市長 朗読
平成21年度(株)朝日新聞社「千の風になったあなたへ贈る手紙」募集
奨励賞 受賞作品
「キャッチボールの約束」
少年野球チームに入り頑張っていた息子が、
十歳の秋に「劇症型心筋炎」という病気で亡くなりました。
その息子に宛てた手紙です。
「亡くなった人に、手を合わせて「願いごと」をしてはいけませんよ。あの世で人は神様になるわけじゃないんですから。あなたの願いごとを叶えてあげることができす、故人に辛い思いをさせてしまいます。」
・・・そう言っていたのは、お坊さんだっけ?
・・・それとも何かの本で読んだんだっけ?
でもね、ほんの一つだけでいいから、どうかきみに、お父さんのお願いを聞いてほしい。
聞いてくれるかい? 叶えてくれるのは今じゃなくていいから。
お父さんが、そっちに行ってからだったら、叶えてもらえるお願いでしょう?
いつかまたきみに会える日が来たら、その時、もう一度お父さんとキャッチボールをしてください。あのグラウンドに行って、キャッチボールをしてください。
今度は、エラーしたって、暴投したって、もうあの頃みたいに怒鳴ったりしないって約束するから・・・・・・・。
青空の下で、キャッチボールをしようよ。
おしゃべりをしながら、笑いながら、お父さんとキャッチボールをしようよ。
いい球投げてくれたら「オッケー!ナイスボール!」って言ってあげるよ。
きみに負けないくらい、お父さんも思いっきり投げるよ。
横で見ているお母さんも、笑顔で「頑張れ~」って言ってくれるかもしれないね。
・・・・・そんな風に、もう一度きみとキャッチボールができたらいいなあ。
だから、その日まで、どうかお父さんのお願いを覚えていてください。約束だよ。
いつかきみともう一度キャッチボールができるその日が来るまで、お父さんも頑張るって、約束するから。
(朗読者 西条市長のコメント)
大切な息子と時間を共有できたことへの感謝の気持ちが表れた、素晴らしい作品です。今を生きる、多くの元気な親子の皆様にも、ぜひこの作品を読んで頂きたいと思います。子どもと生きる歓びや、その大切さというものを今一度この作品を通して感じていただきたいと思います。
手紙には力があり、そして人の美しい心を伝えます。口で言われるのも嬉しいが手紙を書いてくれるとそれ以上に心に響く力があります。
手紙事業を通して、西条の美しい心を伝える文化を育み、そして発信していきたいと思っています。
「千の風になったあなたへ贈る手紙」特別選考委員
竹田 美喜さん 朗読
平成21年度(株)朝日新聞社「千の風になったあなたへ贈る手紙」募集
朝日新聞社賞 受賞作品
「千の言の葉」
十一月、私の五十八歳の誕生日に雪が降りました。その二日後があなたの十五回目の命日。
十五年前、がんで逝ったあなたが、家族に残した手紙に、『必ずみんなのそばにいて守っているから』と書いてありましたね。
「四人もいるのにどうやって?」
「分身の術でも使うのか!」
「お父さんていいかげんなんだから・・・」
と、みんなで笑い合いましたっけ。
『明るく明るくね。お父さんがいなくてもいるかのように暮らしていくんだよ』とも書いてありましたね。はいはい、そのように生きてきましたとも。
子供たちは、十六、十四、十二歳の年令で父親の、がんとの壮絶な闘いと死を見ました。目の前に刃をつきつけられるごとく、人生の不条理を見ました。
そろってのんびり気弱な彼らでしたが、その後何度かの自らの転機に際しては、断じて逃げない姿勢を見せ、私を驚かせたのです。
あなたは子供たちへのたくさんの手紙を、私に託していきました。成人までの誕生日毎のバースデーカード。結婚する時のお祝いの手紙。一通ずつ渡すたびに、彼らは照れくさそうに嬉しげに受けとり、必ず一人でひっそりと読んでいたものでした。
私たち四人、平穏順調にこの十五年を生きてきた訳ではないこと、知っていますよね。
悲しみの大波を受けた後だから、その後の中波小波をやり過ごせたのかなとも思うけれど、それでもそれぞれのがんばりは、ほめてやって下さいね。子供たちと、ついでに私のことも。
千の言の葉で、子供たちを導き守ってくれてありがとう。千の言の葉で、私たちを幸せにしてくれてありがとう。
今日も雪がちらついています。寒がりのお父さん、天国で暖かくしていますか。
(朗読者 竹田美喜さんのコメント)
今は亡きご主人様への感謝の想いに溢れた心温まる作品です。また、作者の方の手紙を書けることの喜びが感じられる作品でもあると思います。「ありがとう」がとてもすっきりと、さわやかに聞こえる作品です。
「千の風になったあなたへ贈る手紙」特別選考委員
新井 満さん 朗読
平成21年度(株)朝日新聞社「千の風になったあなたへ贈る手紙」募集
大賞(新井満賞) 受賞作品
「僕の自慢のお母さんへ 誕生日おめでとう!!」
有り余りの紙でごめんね。
お母さん、56歳の誕生日おめでとう。ぼくはあいかわらずお父さんにしごかれてるよ。もうお母さんが死んじゃってから、より一層お父さんがぼくに厳しくなって大変だよ。
まあ、お母さんのせいじゃないんだけどね。本当に時々、お母さんが突然ぼくの記憶の中に入りこんで もう、そのたんびに、涙が出ちゃって大変なんだよ!!本当にお母さんが死んで二年もたつけど、まだお母さんが死んだっていう実感がわかないんだよね。いい思い出をありがとう。
ぼくも一生懸命に生きてるからあんまり心配しないでいいよ。まあ、まだ頼りないからちょっとは見守っててほしいけどね。5月なのにこの暑さ。もう日本は大変だよ。そっちはどう?そっちの生活を時々夢で紹介してくれたらうれしいな。他にもぼくが悪いことしてたら遠慮なくビシビシ怒ってね。
真実は中学生になって、ちょっとお父さんに反抗してるけど、やっぱりお母さんの血筋かな?とても優しい子に育ってるよ。まあ、すごく生意気だけどね。
家ではあまり弾いてないけど、バイオリンはお母さんの言う通りやってるよ。なんか前より下手になってるような気がするけど。天国までバイオリンが届いてくれたらすごくうれしいな。
今日は雲ひとつないすごくいい天気、お母さんが空から見守ってるのかな?ケーキとかないけど、本当に誕生日おめでとう!!
最後にお母さんと歌った曲を書くよ。お母さんもできれば天国で歌ってね。まあ覚えてる範囲だけどね。
「翼をください」♪
いま私の願いごとが かなうならば 翼がほしい
この背中に 鳥のように 白い翼つけて下さい
この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ
悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ 行きたい
いま富とか名誉ならば いらないけど 翼がほしい
子供の時 夢見たこと 今も同じ 夢に見ている
この大空に 翼をひろげ 飛んで行きたいよ
悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ 行きたい
お母さん、誕生日おめでとう!! by 拓人
「千の風になったあなたへ贈る手紙」の作品紹介の終了後、特別選考委員である松山市立子規記念博物館館長の竹田美喜さんより、子規と漱石を巡る「千の風になったあなたへ贈る手紙」ともいうべき手紙が紹介されました。非常に貴重な手紙の紹介に、来場者は一際関心をもって聞き入っていました。
「没後5年の子規へ贈る手紙―漱石」を朗読する竹田美喜さん
「千の風になったあなたへ贈る手紙」の作品紹介の終了後、この度の「千の風になったあなたへ贈る手紙」全国募集と今後のまちづくりについて、フリートーキングが行われました。
パネリストのみなさんから様々な提案が出され、今後のまちづくりに大きくつながる座談会となりました。
本イベントの最後は、様々な地域の皆さんによる「千の風になって」ライブが行われました。ゴスペルやフラによる祈りの心に満ちた迫力の「千の風になって」が圧巻でした。
最後は、出演者全員がステージ上に上がり、来場者の皆様と全員で「千の風になって」を合唱しました。会場が一体化した盛り上がりの中で、イベントは幕を閉じました。
来年3月には、この度の募集の優秀作品の表彰を兼ねた作品紹介イベントを開催する予定です。ぜひ、ご期待ください。