ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 分類でさがす > くらしの情報 > 市民活動・協働のまちづくり > ボランティア・NPO法人 > 加茂川河口 生きもの調査 結果報告(平成28年10月2日実施)

本文

加茂川河口 生きもの調査 結果報告(平成28年10月2日実施)

ページID:0035061 更新日:2017年4月6日更新 印刷ページ表示

 平成28年10月2日(日曜日)、加茂川河口干潟で生きもの調査(市民参加型)を行いました。

干潟の多様な機能

はじめに ~今回の調査地について~

 日本列島の沿岸域は、生物多様性がきわめて高いことが特徴です。とりわけ陸と海の移行帯は、干出時間の差異・地形・底質・淡水の影響などの環境条件が多様なために、さまざまな底生生物が生息します。
 干潟がなければ、沿岸生態系には大きな負荷がかかります。干潟最大の機能は、河川から流れ込む有機物や栄養塩を蓄積することです。また、有機物や栄養塩は干潟にすむ生きものたちの食物連鎖によって処理されます。干潟にすむ底生生物は、干潟環境においてきわめて重要な役割を持ちます。
 干潟は海の「水処理工場」としての機能を持っています(「干潟生物の市民調査」調査リーダーの手引き2011 抜粋)。

4回目となる加茂川の干潟調査

 西条市には、貴重な干潟が残されています。加茂川河口の干潟にどんな生きものがどのくらい生息しているかを調査するため、4回目となる「市民参加型 生きもの調査」を17名で行いました。調査方法は「干潟生物調査ガイドブック ~東日本編~」に則って行いました。調査リーダーは西条自然学校 山本様、光澤様、また、専門家として高知大学教育学部 伊谷准教授にもご参加いただきました。

調査の様子

干潟の生きもの調査-1  干潟の生きもの調査-2

干潟の生きもの調査-3  干潟の生きもの調査-4

調査結果

表層(S)底土中(B)合計(S+B)
No. 発見班数発見率(%) 発見班数発見率(%) 発見率(%)優占度
紐形動物門        
ヒモムシ類 spp.00 440 40 ++
軟体動物門        
55ヘナタリ110 00 10 +
57ホソウミニナ330 110 40 ++
58ウミニナ880 00 80 +++
64マルウズラタマキビ440 00 40 ++
118アラムシロ440 110 40 ++
190マガキ110 00 10 +
214シオフキ00 110 10 +
217クチバガイ00 110 10 +
225ユウシオガイ00 110 10 +
242オキシジミ00 440 40 ++
253アサリ00 330 30 ++
265マテガイ00 330 30 ++
271ソトオリガイ00 440 40 ++
環形動物門(多毛類)        
274チロリ科 Glycera属 spp.00 440 40 ++
275ヤマトキョウスチロリ00 330 30 ++
290スナイソゴカイ770 220 70 +++
300ギボシイソメ科 spp.00 110 10 +
多毛類(種不明) spp.110 110 20 +
節足動物        
338シロスジフジツボ330 00 30 ++
367マドカアナジャコヤドリムシ00 110 10 +
テッポウエビ類 spp.00 220 20 ++
383ハサミシャコエビ110 220 20 ++
384ニホンスナモグリ00 330 30 ++
385ハルマンスナモグリ00 110 10 +
387アナジャコ00 220 20 ++
388ヨコヤアナジャコ00 110 10 +
390テナガツノヤドカリ550 550 60 ++
394ユビナガホンヤドカリ660 110 60 +
397マメコブシガニ00 220 20 ++
417トリウミアカイソモドキ00 110 10 +
423ケフサイソガニ110 110 20 +
424タカノケフサイソガニ10100 00 100 +++
427ヒライソガニ110 00 10 ++
429アシハラガニ110 00 10 ++
430ヒメアシハラガニ330 330 40 ++
435カクベンケイガニ550 00 50 ++
フタハピンノ110 110 20 +
448スナガニ770 00 70 +++
450ハクセンシオマネキ00 220 20 ++
451コメツキガニ550 770 100 +++
457オサガニ00 110 10 +
458ヤマトオサガニ00 110 10 +
棘皮動物門        
488ヒモイカリナマコ110 10100 100 +++
魚類        
ツマグロスジハゼ00 220 20 ++
トビハゼ110 00 10 +
 ヒモハゼ00  220  20 ++

調査地域:加茂川右岸先端

調査日時:2016年10月2日 16時00分~17時30分

No.は干潟ベントスフィールド図鑑(日本国際湿地保全連合)の生物種通し番号

10班(ひと班1~2名)で実施

合計(S+B)は、SとBを区別せずに合計

優占度:+++,優占種(発見率70%以上)

      ++,普通種(70%未満、10%あるいは発見者数2 以上)

            +, 少数種(10%未満あるいは1班だけの発見)

伊谷准教授(高知大学教育学部)のコメント

はじめに

 先日は、調査に参加いただきまして、ありがとうございました。準備と運営を担当してくださった西条市役所と西条自然学校みなさんにも感謝いたします。今回の調査地は加茂川右岸側の河口部分で、前回の調査から少し川のなかに戻ったところです。砂泥の河口干潟ですが、高知の小規模な河口干潟を見慣れた私からすると、対岸が遠く離れた視線の先にあって前浜干潟のように錯覚してしまうくらい広大な干潟です。

 調査の結果、45種を越える動物が記録されました。これはこれまで4回の調査を通して最大の種数となっています。これは、今回の調査が河口干潟の生物と海側の前浜干潟の生物の分布の境界にあって、両者が採集される場所であったためと考えられます。例えば甲殻類では、アシハラガニやヒメアシハラガニ、ハクセンシオマネキといった河口に多い生物と、アナジャコやハルマンスナモグリといった海側に多い生物が採集されました。

絶滅危惧種

 例年、レッドデータブックに掲載されている種についてコメントしていますが、これまでは、日本ベントス学会が作成した東海大学出版会のレッドデータブック「干潟の絶滅危惧動物図鑑」(日本ベントス学会編、2012)のランクを紹介していました。本をお持ちでなくても、レッドリストについては、日本ベントス学会のホームページからダウンロードすることができます(日本ベントス学会編(2012 )干潟ベントス分類群別のレッドデータカテゴリー)。今回の調査では「準絶滅危惧」に指定された種が9種採集され、「絶滅危惧II 類」に指定された種が1種採集されました。「絶滅危惧II 類」の種とは、カクレガニ科のフタハピンノです。西条自然学校の調査(光澤ほか、2016、「愛媛県西条市加茂川河口干潟における底生生物相」愛媛県総合科学博物館研究報告、20:1−15)でも加茂川で確認されていますが、今回、新たに本種の標本を得ることができました。これまでは、紀伊水道と九州沿岸でしか確認されていない希少なカニ類で、イソシジミやクチバガイ、ソトオリガイなどの二枚貝に寄生することが知られています。今回の調査では、出歩いていたオスを採集したようですので、二枚貝のなかを調査すればより多くの個体を採集することができるかもしれません。

環境省版海洋生物レッドリスト

 ところで、平成29年3月に、環境省版海洋生物レッドリストが公表されました。「海のレッドリスト公表」、「56種が絶滅危惧種」などと新聞に載っていましたので、ご存知の方も多いと思います。環境省のこれまでのレッドリスト・レッドデータブックでは、主に陸域の生物、陸水域の生物が対象となっていて、干潟に住む生物では、魚類と軟体動物のみが評価されていました(環境省第4次レッドリスト)。それが、とうとう、甲殻類やゴカイ類などについても評価され、レッドリストとして公表されたわけです。日本ベントス学会編(2012)の干潟のレッドデータブックとの違いは、対象とする生息域と評価方法です。日本ベントス学会が干潟域のみを対象としているのに対して、環境省は全環境を対象としていますので、干潟では減少しているけど、潮下帯には健全な個体群があるような種では、両者のリストの評価結果が異なります。また、日本ベントス学会は定性評価、環境省では定量評価によりランクをつけましたので、やはり評価結果が異なる場合があります。最後に、日本ベントス学会編(2012)の出版後に新たな情報が集まった場合にも、評価結果が異なることになるでしょう。興味をお持ちの方は、両者のリストを見比べてみてください。ちなみに、フタハピンノは環境省のレッドリストでも「絶滅危惧II 類」として評価されています。

おわりに

 いずれにせよ、日本全国で数を減らしていて、絶滅危惧種や、うかうかしていると絶滅危惧種となってしまうような心配な種が加茂川にたくさん暮らしているということです。西条市の皆さんが、引き続き、加茂川の干潟に興味をお持ちいただければ幸いです。

戻る

Adobe Reader
PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)

おすすめイベント