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水の歴史館 道前平野土地改良区(面河ダム・志河川ダム) 2

ページID:0070196 更新日:2015年1月15日更新 印刷ページ表示

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道前平野土地改良区(面河ダム・志河川ダム)

 道前・道後の両平野は、瀬戸内海に面し、瀬戸内式気候特有の温暖で少雨の地域です。わが国の平均年間降水量が1,700mm程度であるのに対して、この地域は降水量が1,300mm程度の降水量しかありません。

 そのため、古来より農業用水を確保するために、先人達はため池を築くなどして、用水確保に涙ぐましい努力を重ねてきましたが、十分とはいえず、しばしば干ばつによる水不足に悩まされ、水争いが繰り返されてきた地域です。特に、道前平野地区においては、釜之口井堰等(西条市丹原町田野地区)の水利慣行にまつわる水争いが大規模なものとして記録に残されています。

 年々農業用水に不足を来たしていた中で、戦後の食糧難で食糧増産に対する強い要請を受け、恒久的な用水対策が急務となりました。この実情を打開するため、道前側では周桑平野地区として中山川上流(旧丹原町桜木村の中山川本・支流合流点付近)に、道後側では石手川上流の湯山村、または愛媛県上浮穴郡面河川上流(今の久万高原町)に「ダム」を築造し、農業用水を確保する水利開発事業が検討されましたが、最終的に道前・道後平野が合同して面河川を水源とした発電や、その他の事業を共同する計画が優先され、地元関係市町村が中心となり、愛媛県ならびに地元選出代議士や愛媛県議会議員等に要望し、国営事業として本事業の推進について陳情を行いました。

  当時の久松定武愛媛県知事は、この事業を最大の政治公約として、その実現に努力し、昭和26年8月に国の直轄調査新規地区として採用する陳情を行い、一方、この事業を推進するため、道後側では昭和26年10月に道後平野農業水利改良事業貫徹期成同盟会(会長:久松定武愛媛県知事)を結成しました。

  道前側では、昭和26年12月に周桑平野農業水利改良事業期成同盟会(会長:河上哲太元代議士)を結成しました。さらに、昭和27年2月には道前平野農業水利改良事業貫徹期成同盟会へと発展していきました。

  昭和27年5月には、道前道後平野農業水利改良事業促進同盟会連合協議会(会長:久松定武愛媛県知事)を結成し、道前・道後の結束を高め、昭和27年8月に道前道後平野農業水利改良事業貫徹期成同盟会連合会を結成し、道前・道後の統合推進機関として発展強化され ました。

  農林省岡山農地事務局の踏査により、現在の道前・道後平野を一体とする総合開発計画の構想がまとまり、地元関係者の同意が得られ、次いで、岡山農地事務局の調査班の手により調査計画が進められ、昭和28年秋に「ダム」の位置は、愛媛県上浮穴郡面河村笠方(今の久万高原町)の割石川(高知県の仁淀川水系)を選ぶ総合開発計画が樹立しました。

  昭和29年度に採択を願うため、国へ申請しましたが、時あたかも政府は1兆円の緊縮財政を堅持しようとする折であり、政治折衝もむなしく、採択されるには至りませんでした。その後あらゆる努力を重ねた結果、昭和31年2月に国営事業計画地区として正式採択され、昭和32年4月に国営事業(道前道後平野農業水利事業)として、道前道後平野農業用水、道後平野工業用水、発電の共同事業として着手の運びとなりました。

  この事業は、愛知用水事業と並び称せられる一大プロジェクトでした。工事は順調に進み、昭和42年9月19日に事業が竣工したことにより、道前・道後平野は干ばつの被害から解放され、経営が安定し、飛躍的に発展することとなりました。

  また、面河川からの分水は、仁淀川下流の各自治体はもとより、高知県の協力があってこそ実現したものです。

■道前道後への用水の流れ

 道前道後平野の農業用水は、石鎚山脈南面の面河渓谷一帯に降った雨水を「面河ダム」に貯え、それを四国山脈の山並みに隧道(トンネル)を掘り、道前道後の両平野に導いています。これが山並みを越えて架かる水の連なりであることから「虹の用水」と呼ばれています。

道前道後への用水の流れの図

■面河ダムから道前平野への農業用水の流れ

 事業の根幹をなす施設は、愛媛県上浮穴郡面河村(今の久万高原町)の仁淀川水系割石川に建設された面河ダムです。直接流域は16.8km2で間接流域59.3km2を合わせると76.1km2になります。間接流域から面河ダムに貯留するための堰は、全部で11ヵ所ありますが、なかでも面河第一、第二と、坂瀬川、妙谷川承水堰(しょうすいぜき)が代表的なものです。割石川本流やこれら間接流域から集められた水で有効貯水量2,680万m3を確保します。面河ダムに貯留された水は、隧道(トンネル)をとおり、中山川の逆調整池まで流下し、逆調整池で道前平野側と道後平野側に分水されます。道前平野側では逆調整池で放水され、中山川を流下した面河ダム用水を、中山川取水堰から取り入れた後、両岸分水工で右岸幹線水路と、左岸幹線水路に分水しています。一方、道後平野側では逆調整池に設置されている千原取水塔より取水し、隧道(トンネル)をとおり、南北分水工で北部幹線水路と南部幹線水路にそれぞれ分水されています。

面河ダムから道前平野への農業用水の流れの図

中山川取水堰の写真
中山川取水堰

■志河川ダム(国営道前道後平野土地改良事業)

 国営道前道後平野農業水利事業(面河ダムを造った事業)完成後40年余りを経過した今日、社会情勢が大きく変貌する中で、道前地域では、生鮮食料品の供給基地として、消費者ニーズに対応した農業生産、施設園芸団地の形成など、地域の特性を生かしたさまざまな取り組みが行われており、このための新しい水需要への対応と、施設の整備と近代化が必要になっています。そこで、これらを総合的に整備して新しい時代に即した水利施設を建設し、農業経営の安定と合理化を図るために、再び国営道前道後平野土地改良事業が計画され、土地改良法の手続きを経て、平成元年度からは、当初事業で造成された面河ダムや幹線用水路、取水施設等の老朽化した施設を改修し、従前の機能を確保するとともに、水管理施設等の近代化を図るための施設整備(1期事業)を、また、中山川水系志河川に「志河川ダム」、重信川水系に「佐古ダム」を新設し、水田裏作用水並びに新規受益地区のかんがい用水を確保し、農業用水の安定的な供給を図り、農業経営の合理化と安定化を図るための水源確保(2期事業)については平成3年度から着手し、平成22年度に完成しました。

■志河川ダムから道前への農業用水の流れ

 国営道前道後平野 土地改良事業(2期事業)の根幹をなす施設は、西条市丹原町志川の中山川水系志河川に建設された志河川ダムであり、平成16年度に本体工事に着手し、平成22年度に完成しました。このダムは、直接流域17.23km2の志河川本流に取水堰を設け、有効貯水量96万m3を確保します。志河川ダムに貯留された水は、中山川を横断する水管橋を通り、両岸分水 口(西条市丹原町来見)に放出され、河北地区(旧東予市三芳地区)の新規かんがい用水と、河北地区を含めた道前平野地区(旧事業の受益地)の裏作用水(10月7日~6月5日)として使用されています。

志河川ダムから道前への農業用水の流れの図

志河川ダムの写真
志河川ダム

道前平野土地改良区ホームページ
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