カブトガニの歴史をたどってみると、約5億7000万年前(カンブリア紀)の三葉虫までさかのぼります。三葉虫から進化し、カブトガニのような姿の生き物が現れたのは約4億年ほど前です。これが少しずつ進化して約2億年前ごろ(ジュラ紀)には、今のカブトガニとほとんど変わらない姿になりました。
カブトガニの化石を調べてみると、今から二億年くらい昔にさかのぼって、現在とほぼ同じ体の形をしていたことが分かります。中生代の三畳紀といわれる時代です。恐竜や鳥の祖先の始祖鳥が栄えていました。
それからカブトガニは、進化も退化もほとんどせずに、わずかな仲間と生き続けてきました。そのため、貴重な「生きている化石」として知られています。また、「生きている化石」この言葉が使われたのもカブトガニが最初です。
カブトガニの祖先は、今から五億年程前の古生代カンブリア紀に生まれ、同じ頃に栄えた三葉虫とよく似た動物だったと考えられています。
現在生きている動物の中で、三葉虫に一番近いのもカブトガニで、卵からふ化した幼生は、尾も生えておらず、三葉虫にたいへんよく似ているので、三葉虫型幼生といわれています。
カブトガニと同じ中生代に姿を現した鳥類が、今ではおよそ8600種類に分かれて地球上に栄えているのに、カブトガニは、その頃からほとんど姿を変えずに、しかも、わずかな種類のままで生き続けているのはなぜでしょう。
カブトガニ研究の第一人者、関口晃一博士は、次のように言っておられます。
「それは、カブトガニが、大昔から現在まで、同じ環境に暮らしていた為だと考えられます」
それは、外洋から離れた入り江で、底にはやわらかい泥があり、岸辺にはきれいな砂浜があるような場所です。
もし、カブトガニが波の荒い外洋や、淡水の川にさかのぼったりすれば、当然、その環境に適応した形に体が変化したでしょう。
また、カブトガニの産卵の習性も、長期間、生き続けてきた理由のひとつに挙げてよいでしょう。
カブトガニの卵は、7月から8月の大潮の満潮時に、入り江の河口付近の砂の中、10〜15センチの深さに産み付けられます。そこは、潮が引けば完全に干上がるような所で、人間が貝掘りなどに来て掘りおこす他は、自然の外敵はほとんどないと思われます。また、産卵した砂地は、強い日差しを受けて温度が高くなり、卵は温められます。これも、ふ化するのに都合がよい条件です。
海水は割合腐りやすく、特に高温になると、中の卵まで腐ってしまうことがありますが、砂地であるため、通気性も保たれ、この危険も防ぐことができます。また一方では、卵の中に水を含む仕組みができており、乾燥から守られています。この他にも、硬い甲羅で身を守ることができたり、胸肢の再生力があったり、環境の変異にも生き延びる順応性や、一年の約4分の3が休眠期であることも、カブトガニが長く生き続けてきた理由と考えられます。